ライトコースの方は受精卵のみの送付になります。受精後、2細胞までの卵割を観察できたものを送りますが、死着補償はありません。
到着後、速やかに観察をしてください。
プラヌラになっている場合、クリームケースごしの観察は難しいので、底のほうの水をスポイトで取り、シャーレに入れて、アナトミーかティシュー(180~200倍)で観察してください。
プレミアムコースの方は受精卵以外にクラゲを送りますので、ご注文前に海水水槽を立ち上げてください。砂は不要です。15~20cm水槽に投げ込み濾過(濾過ボーイSなど)かスポンジフィルター濾過をつけてください。


カフェコース、ライトコース、プレミアムコースのいずれでも、参加された方は後日アップするビデオを閲覧できます。LINEからのご質問も一日一回まで半年間受け付けています。
カフェコース
カフェでの実験は該当する日時のカフェ予約をして、「カギノテクラゲ実験希望」とLINEから送ってください。
2025年5月24日(土)15:00~16:30 >>ご予約
2025年6月7日(土)15:00~16:30 >>ご予約(クラゲ完売次第終了します)
ライトコース >>ご参加
プレミアムコース >>ご参加
【 カギノテクラゲ 】
刺胞動物門
ヒドロ虫綱
淡水クラゲ目
ハナガサクラゲ科
カギノテクラゲ属
カギノテクラゲ
学名:Gonionemus vertens A. Agassiz, 1862
触手の先が鉤状になっているのでカギノテクラゲ。
触手の先に付着細胞があり、それで海藻や岩、水槽の壁にくっついています。
水槽からスポイトで吸っても、鉤が引っかかってなかなか吸い取れないこともよくあります。
傘は浅いお椀状で、十字の放射管が特徴です。成熟個体は放射管の上に4本の襞状の生殖腺があり、雌は橙・赤・紫、雄は黄褐色です。メスが濃く、オスが薄めという印象です。
触手の付け根の緑色の部分には、オワンクラゲと同じようにGFP(緑色蛍光タンパク質)を持っています。
神経毒が強烈で、刺されると全身症状により喘息のような咳、鼻水、腰痛・筋肉痛、吐き気、頭痛、痙攣、寒気、チアノーゼを引き起こすことがあり、救急車出動もよくあるそうです。
水槽で飼育している分には、素手で触ることもないし、飼育水の飛沫が飛ばないように注意をする程度でよいのですが、採集したり、採集したものを袋に詰めたり、袋から出したりする時が危険です。
一番、気を付けなくてはいけないのが。水槽の中のものを取り出す時。もちろん、水槽に手をつっこんではいけません。
観察

十字が放射管。真ん中が胃腔の端で、向こうに見える白いものが口柄。

生殖巣が放射管にくっついて発達していることがわかります。



メスっぽい・・・

触手の付け根には眼点があり、このあたりが緑色に光ります。オワンクラゲで有名になったGFPをカギノテクラゲも持っています。

光っているのがわかりますか?

触手にある刺胞が怖いですw

口はフリルみたい。

白っぽく見えるところが卵。もっと拡大すると、メスはでこぼこ、ぶつぶつ感があり、オスはスッとしています。

こんなふうにして観察します。
受精実験
受精実験で大切なことは、卵の成熟です。成熟というのは減数分裂が完了しているということ。生物は両親から引き継いだDNAを父からの分と母からの分で1対持っています。それらをそのまま接合してしまうとDNAが二倍になってしまいます。
精子はもともとその生物のDNAの半分だけを保持しているのですが、卵は他の細胞と同様に2対のDNAを持っています。これが減数分裂によって余分な核を放出し(放出されたものを極体といいます)精子と同じ数になった時点で卵成熟完了です。
卵成熟が完了されていない卵は受精ができません。
ヒトデでの実験では卵巣から取り出した卵を、神経をすりつぶして卵成熟誘起ホルモンを添加したり、1-メチルアデニン(1-MeAde)を添加して卵成熟を促す必要がありますが、ウニやクラゲでは放精・放卵をした時点で卵成熟が完了しています。
ウニでは放卵させるために、塩化カリウムやアセチルコリンを注射しますが、クラゲは光刺激で放精・放卵するので楽です。
エダアシクラゲは生息地によって「暗タイプ」と「明タイプ」の両方が存在します。暗タイプとは明るい環境の後に暗くなると放精・放卵をするもの、明タイプはその逆です。
そのため、飼育しているエダアシクラゲ(採集したクラゲ)がどちらのタイプであるかを先に調べる必要があります。
カギノテクラゲは「暗タイプ」とわかっているので楽です。ちなみにカミクラゲも「暗タイプ」。
明タイプには、タマクラゲやサルシアクラゲがいます。
タマクラゲは飼育していますが、さすがに小さいので素人環境下での受精実験には適していません(そもそも、水槽の中で遊離しても、見つけるのが大変です)。
カミクラゲは受精卵を作れても、まだ誰もポリプにできた人がいません。きっとタマクラゲのように他の共生生物が必須なのだと思うのですが、タマクラゲのポリプが発見されていないので、共生生物も特定はできていません(これ、発見したいですねえ)。
あれだけ各地で大量発生するカミクラゲ。ポリプがみつかっていないというのは謎です。
・・・で、カギノテクラゲですが、これはポリプも大きいのです。ぜひ、ポリプを作ってみたいと思います。
まず、オスとメスを見極めます。
メスは明確な橙色、赤色、または紫色の生殖腺を持ち、オスは黄褐色の生殖腺を持ち、これらは4本の放射管に沿って垂直に配置されています。
クリームケースに取り、モバイル顕微鏡で生殖腺を観察します。予め色で判別がつくため、モバイル顕微鏡ではそれの再確認と同時に成熟具合を調べます。
卵は卵巣からにゅう~っと出てきます。精子はもや~ふわ~と出てきます。
8:00(時間は好きな時間で行ってください)
オスメスを見極めて1匹づつクリームケースにセットします。クリームケースを追加で購入して5匹全部を1匹づつ入れるのでもいいです。
生殖巣が赤っぽいのがメス。黄色やベージュなど色が薄いものがオスです。
そうしたら、暗い処に置いてください。光が入らないフタがぴっちりしまる缶などがよいです。
9:00(セットから1時間後)
そのまま観察続行はせずにクラゲは水槽に戻した後、卵・精子の観察&受精をしてみます。

これはわかりやすいようにクラゲを入れたままにしていますが、実際にはクラゲを水槽に戻してから観察をしてください。
上の写真では放卵が確認できます。

未受精卵。下に小さな光る粒が2つついていますが、これは極体。
卵が減数分裂をして卵成熟に至る際に放出された核です。減数分裂についても知りたい場合はLINEからご質問いただけます。
9:20 媒性 以降室温25℃


多くのクラゲにはウニのような卵膜はないので、受精膜が上がるのは見ることができないのですが、カギノテクラゲには特殊な受精膜を作ることがあります。これについてはこの後配信する動画でお話し、エダアシクラゲの研究者の立花先生からいただいたお話もLINEにてお話します。
10:10

下のほうの受精卵には凹みができてきました。
10:15

ちょっとわかりづらいのですが、下の受精卵は2細胞期になりました。上のほうも凹みができてきています。

卵の透明度が低いせいで卵割がはっきりと確認できません。なんだかごつごつしているので、きっと4細胞期、8細胞期なのでしょう。
15:50

胞胚という感じになっています。

プラヌラになりました。
もっと詳しくみてみよう!


卵巣はうねうねとしていますが、エダアシクラゲ同様、卵は表面ににゅぅっと現れて、遊離していきます。

卵巣の中の卵も観察してみましょう。



未受精卵などでは光の加減で卵の周りに膜があるような写真が撮れる場合がありますが、卵割が進んでもしっかり見えるので、これは受精膜だと確定しました。
カギノテクラゲのポリプ以後
ポリプはストロンをのばし、そこからフラスチュールやクラゲ芽を生成します 。ポリプからクラゲが出るのは、通常、水温が17〜18℃を超えると起こり 、好条件では突然の大量発生につながることがあります。
ポリプの無性生殖は、出芽、フラストゥール形成、二分裂が確認されています。
カギノテクラゲの受精膜の考察
クラゲには卵膜はないとされています。したがって受精膜もないということになりますが、ここ数年の実験では明かに受精膜が観察されました。
多くの海外の文献を調べたところ、カギノテクラゲには受精膜が存在することがわかりました。この詳細は少し難しくなるので、興味のある参加者の方にLINEにて共有します。