ピロキスティス

§1 形と名前

Pyrocystis fusiformis (ピロキスティス・フィシフォルミス)、海生植物プランクトン(渦鞭毛藻)です。

ピロキステティスの名前はラテン語の「pyro」(火)と「cystis」(中空の嚢または空洞)に由来するし、フィシフォルミスの名前は、形状に由来しています。

fusi-:ラテン語「fusus(紡錘形)」=スピンドル(糸巻き)のような形
-formis:ラテン語の「〜の形をした」という接尾語

つまり、fusiformis = 「紡錘形の」「先が細くて中央がふくらんだ形の」という意味になります。

紡錘形の細胞の真ん中に核があり、培養容器の外からルーペで見ると三白眼がたくさん浮かんでいるようです。

ピロキスティス/きらら舎

Pyrocystaceae科のすべての種類に共通していますが、ピロキスティス・フィシフォルミス(以降ピロキスティス)も非運動性です。鞭毛は遊走子の時だけもっています。

細胞の葉緑体は、昼間は細胞の壁に近づき、夜は核に向かって収縮するため、昼間と深夜では見た目が違います。

ピロキスティス/きらら舎

§2 発光

ピロキスティスの発光は、ホタルと同じルシフェリンとルシフェラーゼのメカニズムです。ルシフェラーゼ酵素がルシフェリン色素を酸化すると、反応からのエネルギーが青色の光の閃光として放出されます 。青色は青色の光の波長が海水中で最も速く伝わるため、海洋で生成される一般的な生物発光色であると考えられています。

発光は通常、波が砕ける場所や捕食者の接近、人の手の動きなど、物理的な妨害があった際にのみ発生します 。この生物発光は、捕食者から身を守るための防御メカニズムであると仮説が立てられています(「泥棒警報」仮説) 。

暗い海では、発光する渦鞭毛藻を食べた捕食者自身が光り、より大きな捕食者に見つかるリスクがあるため、すぐに吐き出す可能性が高いと考えられています 。

ピロキスティスの飼育容器を日中に叩いたりして、刺激を与えても光ることはありません。ピロキスティスが光るのは、暗くなって数時間経過してからです。

発光には2つの異なるタイプの生物発光フラッシュが観察されています。1つは明るくて速いのに対し、もう1つは明度は落ちますが長持ちするものです。これらのフラッシュの強度と持続時間は、一度発光してから次に発光するまでの間にセル(細胞)がどれだけ充電できたかによります。

疲労したセルの回復期間は15〜60分から6時間の間で変化すると言われています。

§3 寿命(ライフサイクル)

ボルボックスの寿命が48時間と短いのに対し、ピロキスティスはボルボックスほど増殖のスピードは早くない・・・つまり寿命は長いといえます。

ライフサイクルは約5〜7日で、無性生殖をします。

細胞内の葉緑体は、日中は細胞壁に近づき、夜間は核に向かって収縮することで細胞の形状を変化させることが観察されています 。

生殖段階では、1つまたは2つの遊走子が作成され、新しい細胞になるまで親の細胞壁の内側で成長します。

やがて親の体から抜け出します。

鎧板とよばれるカプセルに入った状態で、鞭毛で泳ぎ、カプセルがパカっと割れて栄養細胞が放出されます。

栄養細胞は成長しておなじみのピロキスティスの形になります(この時は鞭毛はありません)。


販売と培養

販売は培養フラスコ(60ml)に入れてお送り・お渡しします。

フラスコのふたはベントキャップといって閉蓋状態でも良好なガス交換が可能で、コンタミネーションを抑えることができるものを採用しています。

飼育(培養)はいたって簡単。

室内の直射日光が当たらない明るい場所に置きます。この緩やかな光で光合成をします。
培養可能温度は10℃~30℃ですが適正温度は20℃。可能であれば16~24℃をキープしましょう。

夜は10時を過ぎたら、部屋の明かりの当たらない場所へ移動してください。
黒い紙や箱をかぶせてもいいでしょう(温度に注意)。

10時というのは、夜のサイクルを最低限確保したいためで、実際は日没に合わせるのが理想です。空調が完備された子供部屋などがベストかもしれません。

理想的な光周期は、12時間光/12時間暗闇のサイクルです 。
より速く成長させたい場合は、14時間光/10時間暗闇。
16時間光/8時間暗闇のサイクルまで一応OKと言われています。

光が8時間未満にならないようにしてください。

こうして、昼と夜のサイクルをきちんと作ると、暗くしてから数時間後に刺激を与えると青く発光します。

このような習性を「概日性リズムを持つ」といいます。

夜、暗くできなくても、特に弱るわけではないので、あまり神経質にならなくても大丈夫です。

ただし、夜に分裂をするようなので、暗い時間がないと殖えないかもしれません(未確認)。

面白がってしょっちゅう光らせていると弱ってしまいます。
また、発光で出た物質で水質が悪化します。

ただし、一日一度、昼間にゆっくり容器を上下して撹拌してください。」

光らせるのは撮影するため、または生存確認で、夜中に目が覚めた時に、ちょっとたたいてみる・・・・・くらいが長く培養するコツです。殖えてきたなと思ったら、植え継ぎをしてください。

植え継ぎは・・・

新しい容器をもう一つ用意して、そこへ飼育している分を半分ほど注ぎ入れ、海水をいれます。
もとの容器にも海水を注ぎます。

本来の意味の植え継ぎとは違うので希釈というほがいいかもしれません。

細菌にはめっぽう弱いので、コンタミには十分注意をしてください(容器は滅菌されたものを使うか、再利用の場合は必ず滅菌してください)。

栄養分があったほうが長期間維持できますが、適度な温度とたっぷりの光を確保できれば半年くらいは培養できます。

きらら舎実験室

屋上にぽつんと立つ小さな小屋です。フクロモモンガやアフリカヤマネなどに合わせて25℃キープをしています。自動温度管理システムなのですが、あまり繊細な温度設定だとつけたり消したりが激しくなるので、やや幅を持たせています。そのため、27℃くらいまで上がってしまう場合もあるので、ピロキスティスは冷温庫で管理しています。

一般家庭では人間が快適な部屋(暑がりの人に合わせて)だとちょうどいいかと思います。

15℃を切っても死ぬわけではなく、増殖が遅くなるデメリットなのですが、26℃を超えると弱ってくる危険もあります。

気合をいれて長期培養をしたい方へは植え継ぎ容器(栄養分入りの海水をいれた培養フラスコ)もご用意予定です。

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